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経済

東芝の遠い「再出発」

非公開化と「車谷復権」の妄動

2022年4月号

 東芝の意思決定者はいったい誰なのか―。東北・関東圏を襲った最大震度六の地震から一夜明けた三月十七日、東芝はもうひとつの激震に見舞われていた。
「ふざけている。許せない!」
 社長の島田太郎、副社長の柳瀬悟郎の怒りの矛先にいたのは社外取締役のレイモンド・ゼイジ。わずか半月前の同一日、島田と柳瀬をツートップへ昇格させた指名委員会の委員長だ。さらに東芝をインフラ部門とデバイス部門に二分割する再編案をまとめた戦略委員会の委員でもある。それが、自身のツイッターで「二分割反対、株主提案賛成」と突如表明し、変節したのである。
 株主提案とは、第二位株主の3Dインベストメント・パートナーズ(持ち分七%)が二分割案に異議を唱え、東芝株の「非公開化の検討」を求めた対案。どちらを支持するか、株主の判断を問う臨時株主総会が同二十四日に迫っていたが、ゼイジはツイート翌日の取締役会にも姿を現さなかった。東芝社内の怨嗟は募る。
「彼は取締役をクビになりたくないんだろ。形勢不利とみてアクティビスト側へ寝返った」
 筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメント(同・・・