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経済

戦争で「ぼろ儲け」の米国

バイデン「ロシア制裁」の本性

2022年4月号

 ウクライナでロシア軍による凄惨な民間人への攻撃が続くなか、一万キロ離れた米テキサス州は六、七年ぶりのシェールガス・オイル景気に沸き立ち、オハイオ州など中西部の穀倉地帯も出荷のトラックが後を絶たない。バイデン政権が主導した制裁でロシアのエネルギー、食料輸出が封じられ、ウクライナ特需が生まれたためだ。米国はウクライナに派兵せず、約二十億ドル(約二千四百億円)の兵器と資金の支援で巨大特需を獲得した。プーチン大統領は戦争の目的を見失ったが、バイデン大統領はビジネスチャンスを掴んだ。ウクライナ危機は戦場とは別の顔も持っている。
 二〇一四~一五年にシェールオイル・ガスの開発と輸出の急拡大に沸いた米エネルギー産業は、サウジアラビアやロシアの仕掛けたシェール潰しの大増産が引き起こした原油・天然ガスの市況崩壊で、一気に萎んだ。新興のシェール企業は次々に経営破綻し、投資マネーも離れた。さらにカーボンニュートラルに向けた主要国の動きが活発化し、化石燃料業界そのものが「未来のない終わった業界」と見下されるようになった。
 シェールが大きく後退した後、サウジとロシアが主導する「OPEC(・・・