三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

プーチンの寝首を掻くのは誰か

「政変」を起こす候補者六人

2022年5月号

 ウラジーミル・プーチン露大統領の寝首を掻くのは、この女性なのか―。ロシア中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁が全身黒ずくめで現れた時、世界中の諜報機関に臆測が流れた。「喪服によって、ウクライナ侵攻への静かな抗議を示した」との解釈も登場した。
 ロシアで全権を握る大統領が、どんな終わり方をするのかを、今ほど多くの専門家が刻一刻と見守っている時はない。
「ナビウリナ後継」説は四月十八日、また息を吹き返した。プーチン大統領が「西側の経済制裁は完全に失敗した」と、ロシア経済盤石論を唱えた日に、ナビウリナ総裁は「制裁はこれから、実体経済に影響を与えてくる」と正反対の見方を示したからだ。
「輸出業者は新しいパートナーを探さなければならない」
「製造業者は過去の世代が作っていた物に、戻らなければならない」
 総裁は延々とロシア経済の「暗い未来」を描いた。
 五十八歳の総裁は、タタール人。モスクワから一千百キロメートル離れた現在のバシコルトスタン共和国のウファに生まれた。伝説的な秀才で、モスクワ大学経済学部を卒業後、新生ロシアの大混乱期に経済・・・