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政治

日露「不測の事態」の高まる危機

岸田政権にプーチンの「報復」

2022年5月号

 ならず者を諫めるには、殴り返される覚悟と、それでも耐え忍ぶための知略が要る。米国を筆頭に国際社会の大勢がロシア軍のウクライナ侵攻を非難しているから日本が安全地帯にいると考えるのは危うい。なにしろ、ロシアは隣国だ。不安なことに、岸田文雄政権の対露政策と国防態勢からは未だ覚悟と知略が伝わってこない。
 対露制裁を矢継ぎ早に打ち出した岸田内閣に対する世論の評価は高い。四月十一日のNHK世論調査では、回答者の八二%が政府の対露制裁を支持していた。夏の参議院議員選挙に向け、政権には「追い風」になっている。
 懸念されるのは、「戦争と欧米への対抗で手いっぱいのはずのロシアの予想外の反発」(日露外交筋)だ。例えば、ウラジーミル・プーチン露大統領の腹心ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は露紙「論拠と事実」(三月二十九日)で「一九四五年の敗戦と米国の占領後、日本が完全に主権を回復していないことを想起すべきだ」と日本の対露制裁を非難した。
 旧ソ連国家保安委員会(KGB)ではプーチン大統領の一期上だったパトルシェフ書記は昨年夏、今回のウクライナ侵攻を予告するかのように同・・・