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経済

《クローズ・アップ》芝田 浩二(ANAホールディングス社長)

続く多重苦「墜落回避」の重責

2022年5月号

 ANAホールディングス社長に四月一日付で芝田浩二氏(六十四歳)が就任した。代表権を持つ専務取締役からの順当な昇格だが、二〇二〇年初から続くコロナ感染の打撃はANAの屋台骨に深刻なダメージを与え、就任直前に勃発したロシアのウクライナ侵攻も上向きかけた業績を叩いた。芝田新社長にとって離陸重量ぎりぎりの重荷を背負った出発といえる。
 一九年三月期に売上高二兆五百八十三億円、営業利益一千六百五十億円と絶好調だった業績は二二年三月期は売上高が一兆二百億円に半減、営業損益も一千七百五十億円の赤字と前年より改善したが、厳しい状況が続く。コロナ要因といえるが、通常であれば会社が倒れていてもおかしくはない衝撃だ。航空会社は一等地に本社ビルを持つわけでもなく、事業資産の航空機も多くはリースで、窮地に耐えられるストックは薄く、路線とブランド、社員のみが頼り。
 米欧の航空大手があっさりと破綻するなか、日本のANAと日本航空は持ちこたえた。とりわけANAは二一年十~十二月期にはわずかとはいえ期間黒字に転換した。コロナ禍のなか、二千百人の社員をホテルやコールセンターなどに出向させ、機材など・・・