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経済

《企業研究》日野自動車

不正「厳罰処分」で半死状態へ

2022年5月号

 まったくの「詭弁」だろう。
 エンジン不正に揺れるトラック大手の日野自動車。その代表取締役会長を務める下義生氏の退任が決まった。今年六月開催の定時株主総会でポストから退き、顧問などの地位にも就かないまま日野とは決別する。
 会社側の説明によると、退任理由は「取締役の任期満了」によるもので、「引責辞任ではない」という。
 だが、下氏は昨年社長から会長に就任したばかり。前任の市橋保彦氏(現ものつくり大学会長)は二〇一七年から四年間にわたって会長職を務めており、まだ六十三歳という下氏の「若さ」を考えても、在任わずか一年での退任は「異例中の異例」(関係者)だ。それに不正発覚を受けて今年三月四日に開かれた会見では、下氏自身「あってはならない行為で経営の責任は大変に重い」とも述べている。どう言辞を弄してみたところでやはり「引責」の二文字が付いて回ることは免れまい。
 下氏は十六年ぶり、日野がトヨタ自動車の子会社となってからは初のプロパー出身社長として一七年から経営の舵取りを担ってきた。ただ、日野が排ガスや燃費を巡る試験で実際に不正に手を染めたとしている時期・・・