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連載

新大学評判記 第29話

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター

2022年5月号

期待に応えぬ「ロシア専門家集団」

 今、日本で最も注目され、発信を期待されている大学傘下の研究機関は北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターだろう。ロシアのウクライナ侵攻で世界的にロシアと旧ソ連圏の地域研究の現代的成果が求められているからだ。同センターの発信は俄に増加してはいるが、プーチン政権の戦略分析や今後の見通しを求める政界や経済界の期待には応えられていない。政策シンクタンクではない以上、当然のことだが、明治以来「北方の巨人」を一貫して警戒してきた日本の「北の知の砦」にしてはふがいないとみる人々は多い。
「ロシア軍によるウクライナ侵攻を断固として非難し、脅威にさらされているウクライナの市民、および戦争に反対するロシアの市民との連帯を表明します」という研究者の声明が同センターのホームページに掲載されている。「時節柄」という表現がぴったりくる声明だが、これが大阪の商店街のたこ焼き屋に張り出されていてもあまり違和感はないだろう。
 ロシアやウクライナの専門家としての矜持や現状への切実な想い、焦燥感といったものがほとんど感じられないからだ。この〝低・・・