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社会・文化

東京大学「剣道部」今昔物語

輝ける伝統と変わりゆく現役世代

2022年5月号

 日本社会で体育会系は出世するとされてきた。先輩に服従し、規律を重んじる風土は、官民の組織が求める人材を生んできた。OBとの密なネットワークも魅力だ。そのメリットは、各界でOBが活躍する名門大学ほど大きい。筆頭は東京大学であり、その中でも明治以来の伝統を有する剣道部は代表格である。
 現在、東大剣道部には約六十人の部員が在籍する。二〇一九年には男女とも団体戦で関東大会を勝ち抜き、全日本学生剣道優勝大会に駒を進めた。昨年は主将の森川莞地が個人戦で全日本学生剣道選手権に出場するなど、そのレベルは今も高い。
 剣道部員が、日夜、稽古するのは本郷キャンパスの七徳堂だ。医学部本館の裏手にある。三四郎池を散策していると、竹刀の音が聞こえてくる。七徳堂は、日本の剣道の歴史を象徴し、「剣道家なら一度は稽古したい憧れの場所」(鍋山隆弘・筑波大学男子剣道部監督)だ。
 東大剣道部は、明治二十年に撃剣会として発足する。そのOB会「赤門剣友会」には現在、約七百人が加入している。師範は警視庁剣道指導室主席師範の指定席だ。剣道は明治以降、警察と東大剣道部の二人三脚で発展する。
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