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社会・文化

まだまだある「怖いウイルス」

「重病の元凶」に予防研究の光明

2022年5月号

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)に限らず、ありふれたウイルスでも一旦感染すると慢性的に体内に潜み、様々な病気を引き起こす。「風邪は万病のもと」と言われる所以である。ただ、これまでは、ウイルスと重篤な疾患の関連がわかっても感染を予防するワクチンなどの技術開発が困難だった。それが、この一、二年で、世界中の医学研究者によるコロナの研究成果によって大きな転換点を迎えている。
 まず注目されるのはコロナ後遺症だ。厄介なのは、時に心臓や肺などの重要臓器に問題を起こすことだ。その頻度や臨床像は、未だ明らかではないが、三月三十日に開催された第七回循環器病対策推進協議会で野出孝一・佐賀大学医学部教授(循環器内科)が、中等症以上の患者において、退院三カ月後時点で三十一例の心臓障害の疑いが確認されたと報告しており、我が国でも研究が始まっている。
 コロナ後遺症対策は、世界中の研究者が取り組む最優先課題だ。二月二十四日、英サウザンプトン大学の研究チームは、コロナワクチン接種者がコロナに罹患した場合、非接種者と比べて、後遺症の発症率が四一%低下したと報告しているし、英オックスフォード大学・・・