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WORLD

プーチンに迫る「エリートの反乱」

「敗戦後」を視野に動く政財界人

2022年6月号

 ロシアのウクライナ侵攻から三カ月を経て、戦況の潮目が明らかに変わった。ロシア軍が苦戦や退却を強いられ、情報戦でも欧米やウクライナ側が圧倒する。プーチン大統領の病気説やクーデター説、三十六歳の後継者登場説がネット空間を飛び交い、大統領の威信を低下させた。
 オリガルヒや退役軍人らがウクライナ戦争を公然と批判し、政権を支えるエリート層のプーチン離れも進む。今後の焦点はロシア国内情勢に移りそうだ。
 政権幹部やビジネスエリートにとって、世界が注視したプーチンの対独戦勝記念日(五月九日)演説が精彩を欠いたことが転機となった。プーチンは総動員令や出口戦略を示さず、侵攻を正当化しただけだった。これがプーチンの求心力を低下させた。
 オンライン銀行創業者のオレグ・ティンコフは五月十一日、ラジオ・インタビューで、「戦争の受益者は一人もいない。自分は億万長者リスト上位二十人のうち、十二人と個人的に話したが、全員が戦争に反対した」と述べた。また、「クレムリン高官の中にも戦争に反対している者がいる」とし、ペスコフ大統領報道官の名を挙げた。ペスコフの娘は開戦直後、SNSで戦争反・・・