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習近平「三期目阻止」の最終政局

夏まで続く「暗闘」の見所

2022年6月号

「把民之所望、做改革所向」(人民の希望を、改革の方向に)。五月中旬、中国中南部の貴州省遵義市政府ホールの壁に、突然巨大なスローガンが現れた。赤い文字、落款は「李克強」。共産党総書記、習近平への個人崇拝が進み各地に習の標語が掲げられる中国でこれは異様な光景だ。「秋の党大会で、李が習の後任の総書記になるのではないか」。そんな憶測が囁かれている。
 遵義市のスローガンは二〇一三年三月、李克強が全国人民代表大会(全人代=国会)で首相に選出された直後、臨んだ最初の記者会見で述べた言葉だ。
 比較的有名な言葉の一つだが政府機関の壁に標語として書かれることはなかった。李だけではない。中国では習以外の指導者の言葉や写真が掲げられることはない。
 遵義市政府の標語の写真は中国国内のインターネットで広く出回っている。李は来年の三月に首相を退任することが決まっている。残り任期が一年もない李を今更持ち上げる政治的な意味が憶測を呼ぶ。
 遵義市は知名度は低いが、中国共産党にとって重要な町だ。一九三五年一月、国民党軍と内戦中の共産党軍が遵義で首脳会議を開き、それまでのコミン・・・