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WORLD

中国「需要蒸発」が招く世界不況

巨大市場で加速する「逆回転」

2022年6月号

 コロナ感染拡大による中国経済の停滞は続き、上海、深圳など主要都市がロックダウンされた四月は工業生産、消費とも二〇二〇年春のコロナ当初に匹敵する落ち込みとなった。習近平政権は二〇年を上回る財政出動で回復を図るが、政府系機関のエコノミストは「中国人のマインドがこの数カ月で一変した」と指摘し、消費手控えと政権不信が成長の重しとなると分析する。〇八年のリーマンショック以降、世界は中国需要を頼りに成長率を高め、金融市場は強気を維持してきた。その中国需要が急速に萎みつつあることを認識すべき時だ。
 今年三月の全国人民代表大会で李克強首相は三十五兆五千億元(約六百七十五兆円)の財政出動を表明した。だが、四月の工業生産が前年同月比二・九%減、小売売上高が同一一・一%減と急激に落ち込んだことで、大型の追加財政措置をとる方針に転換、今年の総額は四十兆元と二〇年を上回る見込みだ。米欧などがコロナの収束に向かい、財政支出を絞り、金融も引き締めに転じるなか、中国は遅れてきたコロナ感染急増に慌て、財政、金融両面でも逆行する。「中国の時計は世界と逆に回り始めた」(前出のエコノミスト)。
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