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政治

安倍晋三「妄言」と暴走の理由

あくなき権力欲と最大派閥の焦り

2022年6月号

 政界は嫉妬の海―。嫉妬心はしばしば権力闘争の原動力にも、また致命傷にもなる。それは政治家にとって一種の能力であり、業でもあるに違いない。安倍晋三元首相は、現役政治家の中でも嫉妬心が強い。発言や表情に分かりやすく妬みをのぞかせる。世間の大人なら未熟者だが、政治家なのであくなき権力欲をむき出しにしていると言うべきだろう。今はもちろん、岸田文雄首相への嫉妬心を折に触れてちらつかせる。
 首相官邸で日米豪印四カ国による協力枠組み「クアッド」の首脳会合が開かれた五月二十四日、安倍氏はつぶやいた。「岸田さんも様になってるじゃない。でも、インドに呼びかけたのは二〇〇六年、私が第一次政権の時に言い出したんだよ。非同盟主義だから慎重で、当時は局長級協議しかできず、時期尚早だったけどね」。四首脳が並ぶテレビ画面を見ながら聞いていた議員は「本当なら自分がここに立っているべきだと思っているんだな」と心中を察した。
 首脳会合終了後、インドのモディ首相は安倍氏と会談した。百二十年近く続く友好親善団体「日印協会」会長を今年、森喜朗元首相から引き継いだからだ。会談後、安倍氏は記者団に披露した。・・・