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経済

WTO「崩壊」で激変の国際貿易

米国が「IPEF」で狙う新秩序

2022年6月号

 米国と中国の対立激化や、反グローバリズムの台頭で機能不全に陥っている世界貿易機関(WTO)は、ウクライナ戦争によって決定的なダメージを受け、国際貿易は新たな秩序を模索する段階に入った。WTOの最高意思決定機関である閣僚会議が六月十二~十五日にジュネーブで開催される予定だが、最悪の場合はWTOが崩壊に向かうとば口になりかねない。
 WTOの誕生は旧ソ連の崩壊と密接に結び付いている。一九九一年に東側の軍事同盟であるワルシャワ条約機構が消滅すると、それまで停滞していた多角的貿易交渉(ウルグアイラウンド)が息を吹き返して九四年に合意、翌九五年にWTOが発足した。二〇〇一年に中国、〇二年に台湾、一二年にロシアも加盟し、米国の軍事覇権に裏打ちされた貿易・投資の自由化が急拡大、グローバリズムは黄金期を迎えた。
 しかし、多国籍企業による過度の経済支配は、欧米で反グローバリズムの台頭を招き、英国の欧州連合(EU)離脱や、米国のトランプ政権の成立に結び付いた。さらに中国が軍事・経済の両面で台頭し、トランプ政権は対中国関税の引き上げや中国製ハイテク製品の使用制限など、自由貿易の原則を・・・