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政治

《罪深きはこの官僚》森晃憲(文部科学省高等教育局私学部長)

私立大学改革の「骨抜き」を主導

2022年6月号

 長らく聖域となってきた私立大学の経営にメスを入れる改革案の内容は、随分と後退してしまった。昨年七月からスタートした議論は、私立の学校法人、中でも私大を標的にしたものである。経営陣である理事会をいかに管理・監督するかが重要なテーマだ。しかし太い首輪で縛るはずが、蓋を開けると首飾り程度の代物になった。
 議論を押し戻したのは、私大側の猛反発。それ以外に「文教族を中心とする自民党議員からの横槍も入った」(文部科学省関係者)という。これに阿るように骨抜きに直接加担したのが文科省の私学部長、森晃憲である。
 昨年七月、文科省に設置された「学校法人ガバナンス改革会議」での議論がスタートした。この有識者会議が昨年中に答申をまとめ、それを踏まえた法案条文を作成。その法案が、今国会に提出されるはずだった。
 同年九月には、私学業界を揺るがす事件が起きた。日本大学の子会社を舞台にした背任事件が、東京地検特捜部によって摘発されたのだ。「日大のドン」といわれた前理事長の田中英壽も、最終的に脱税容疑で逮捕される事態になった。日大問題は、文字通りガバナンス問題だ。理事長を頂点とする・・・