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米中露「カリブ租税回避地」の攻防

巨万の富を巡る独裁国家の「弱点」

2022年6月号

 ロシアによるウクライナ侵攻で、戦場から遠く離れたカリブ海の島々に激変が起きている。カリブ海の租税回避地(タックス・ヘイブン)に巨万の富を有する、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)たちを、米国や欧州の税務・捜査当局が追っているのだ。
 カリブ諸国のタックス・ヘイブンでは近年、中国人富豪や中国政府幹部の動きも活発になっている。「犯罪天国」とされるカリブ海の島しょ諸国で、何が起きているのだろうか。

首相に仕掛けられたおとり捜査

 四月二十八日、米フロリダ州のマイアミ国際空港に民間航空機が降り立った。乗客は、英領バージン諸島のアンドリュー・ファヒー首相(当時)とその側近たち。さらにメキシコの麻薬カルテル「シナロア・カルテル」のフィクサーを自称する人物も乗っていた。
 ファヒー首相は、米当局者にその場で逮捕された。麻薬密輸に加わった容疑と、その口利き代として七十万ドル(約九千万円)を受け取った収賄容疑である。機内にあったスーツケース一杯の札束の大半は、その後、米当局が用意した偽札と判明した。
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