三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

米国は凄まじい「人種差別社会」に

トランプ再登場を乞う憎悪の充満

2022年7月号

 民主党のジョー・バイデン大統領の下で、米国社会の保守化が進んでいる。女性の人工妊娠中絶に対する制限や、銃の購入増加、人種的暴力の増加など、民主党政権が「二十一世紀になぜこんな逆行が起きるのか」と頭をひねるような事態が、次々と起きている。
 ドナルド・トランプ前大統領もすっかり息を吹き返した。背景にあるのはまたも、人種問題だ。米国の白人社会は、有色人種の勢力伸長を嫌っている。
 六月半ば、米下院特別委員会で連日、昨年一月六日の米連邦議会襲撃事件(一・六事件)に関する公聴会が行われた。
 当時のトランプ大統領が、いかに様々な手段で大統領選の結果を覆そうとしたか、生々しい証言が続いた。
 注目すべきは、トランプ陣営の無法ぶりと、そんな前大統領を許す白人層の寛容さである。
 二〇二〇年の投票集計で、アリゾナ州では一万票余りの差でバイデン氏が勝った。ところが、州議会のラッセル・バウワーズ下院議長は、「違反を見つけて、トランプ勝利にしろ」とトランプ陣営から猛烈な圧力を受けた。結局違反は見つからず、議長は結果を尊重し、政権が交代した。
 ・・・