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北朝鮮「核実験後」のシナリオ

米朝協議への渇望と焦燥

2022年7月号

 二〇一七年九月以来となる北朝鮮の七度目の核実験。東北部・豊渓里にある核実験場で準備が整ったのは五月下旬だった。米国の情報衛星はこの時期、第三坑道の修復が終わり、実験用観測機材が運び込まれたことも確認していた。だが、核実験のボタンに指をかけたまま、金正恩朝鮮労働党総書記は悩み続けた。核実験後のシナリオに十分な自信を持てなかったからだ。
 防衛省の資料によると、六度目の核実験では、広島原爆の十倍以上にあたる約百六十キロトンの爆発が観測された。北朝鮮は当時、「大陸間弾道弾(ICBM)に装着する水爆の実験に成功した」と主張した。防衛省も「北朝鮮が核兵器の小型化・弾頭化を既に実現しているとみられる」と結論づけている。金正恩氏も一八年四月、これ以上の核実験は不要という考えを表明していた。
 それでも、北朝鮮が核実験にこだわったのは、米国が自分たちの要求に応じなかったからだ。北朝鮮の要求とは、核保有国としての地位だ。北朝鮮は核を持った。ストックホルム国際平和研究所は六月十三日、北朝鮮が最大二十個の核弾頭を保有しているとして、初めて世界の核弾頭の統計に加えた。だが、米国が核保有国・・・