三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

米国「モノ消費バブル」の崩壊

東アジア製造業「大不況」の凶兆

2022年7月号

「モノの価格が上昇している大きな理由の一つは、太平洋を越えてくる物流のコストです」
 バイデン大統領は六月、国民に向かってこう述べて「これらの会社は一〇〇〇%も価格を引き上げた」と海運会社をやり玉にあげた。だが現状はそういうフェーズではない。インフレの先には、バイデン政権がバラマキによって起こした「モノ消費バブル崩壊」が迫っている。それが、モノを生産し輸出する日本や中国など東アジア諸国にさらに大きな不況の波になって押し寄せる可能性が高い。
 米海事法改正案が六月十三日、下院で可決された。連邦海事委員会(FMC)の海運会社に対する調査権限拡大が盛り込まれており、高騰する海上運賃やインフレ対策になるとしている。だが、もう遅い。海運コストは下がっている。
 物流のボトルネックとされていた米国最大の港湾である西部「ロサンゼルス港/ロングビーチ港」。原稿執筆時点での滞船状況は二十五~二十六隻で百隻を超えた一時期に比べればかなり低下した。
 高騰していたコンテナ運賃も急落しており、アジア-米西海岸航路のコンテナ船スポット運賃は、過去二カ月間で四〇%以上下落し・・・