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経済

《企業研究》ブリヂストン

世界首位にはもう戻れない

2022年7月号

「そのうちまた自殺者でも出るんじゃないの」。古参社員の一人はこう呟いて肩をすくめる。約二十三年前の一九九九年三月、元中間管理職だった男性社員が社長室で割腹自殺するという、何とも凄惨かつ陰惨な事件があった国内タイヤ最大手のブリヂストン。早期退職制度の実施など会社側が打ち出した合理化策に抗議しての自裁だったといわれ、こんな辞世の句まで遺されている。
 すさぶ世にかけてみようぞわが命 倫理仁義の掘り興しをば―。
 ブリヂストンが二〇二一年から進めている「大リストラ」(関係者)が今、佳境を迎えつつある。この七月と八月には国内だけで約二千八百人、海外を含めると全従業員の六%弱に当たる約七千九百人が一挙にグループから切り離される予定だ。
 エンジンの制振部品などを手掛ける防振ゴム事業と、自動車用シート部材などの化成品ソリューション事業の一部売却に伴うもので、いずれもブリヂストンが事業の受け皿となる全額出資子会社を設立。その保有全株を外部譲渡する。
 防振ゴム事業の売却先となるのは中国系自動車部品メーカーの安徽中鼎。一方の化成品は事業再生などの国内投資ファンド・・・