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中南米に再び「左傾化」の波

米国を脅かす「裏庭」の政変

2022年8月号

 中南米で「桃色の潮流(ピンク・タイド)」と呼ばれる左派の躍進が顕著になっている。アルゼンチンやボリビアなどで左派が次々と勝利したのに続き、今年はコロンビアで史上初めて左派候補が大統領選で勝利し、チリでも元左翼活動家が大統領に就任するなど、左派の波は勢いを増している。
 十月に行われるブラジル大統領選では、左派・労働党のルラ・ダ・シルバ元大統領が世論調査で、保守の現職ジャイロ・ボルソナロ大統領をリードしている。ブラジルで左派政権が誕生すれば、中南米全体の左傾化は決定的となり、米国はもとより、世界各国は新たな対応を迫られることになる。
 ブラジルの大統領選は、まるで二〇二〇年の米大統領選の再演を見るようだ。
 共和党のドナルド・トランプ大統領が投票結果を認めず、任期が切れるまで結果を覆そうとしたように、ボルソナロ大統領も「自分が負けるとすれば、投票制度が間違っているからだ」として、選挙制度への攻撃を始めた。ほとんどの世論調査で一〇ポイント以上の差をつけられているからだ。トランプ氏の場合、得票率では四・四ポイント差だった。
 ルラ陣営は「ボルソナロ側・・・