米国のインフレと金融引き締めによるドル高はあらゆる資産デフレを起こし、一方では世界にインフレと混乱をもたらしている。猛威を振るう「ドル一強」。恐ろしいのは、まだこれが始まりに過ぎないということだ。
　ジャネット・イエレン米財務長官は七月、インドネシアのバリで開かれたＧ20会議に先立ち、物価抑制がワシントンにとって「最優先事項」だと述べた。
　急ピッチの金融引き締めは「ドル一強」状態につながる。米ドルに対してユーロは年初から一二％安、円は一五％安、英ポンドは一一％安となっており、破産を宣言したスリランカルピーは四四％安となっている。
　国際決済銀行（ＢＩＳ）が公表した六月の米ドルの実質実効為替レートは一二七・六五と二〇〇二年二月の一二九・〇二以来の水準となった。株、債券、貴金属、コモディティ、暗号資産に至るまであらゆるリスク資産、安全資産が米ドルに対して下落している。
　金融引き締めの影響は金融市場だけではない。腕時計のバブル相場が天井を打った。スイスの高級腕時計（各ブランド人気モデルの平均市場価格）でみると「パテック・フィリップ」「オーデマ・ピ・・・