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経済

アベノミクスの陰鬱な「置き土産」

次世代が負う巨額債務と産業停滞

2022年8月号

 想像もつかない形での安倍晋三元首相の突然の退場で、日本政治の風景は激変した。残された場に立ってみると、安倍政治の残した多くのものを広く見渡すことができる。カルト教団と安倍一族、自民党との抜き差しならない関係は国民に衝撃を与えたが、経済の惨状はより深刻だ。日本の政府債務の国内総生産(GDP)比は二五七%まで上昇。円は購買力平価で一九八五年以来の歴史的円安で、輸入物価の上昇が続く。産業界は半導体を筆頭に電子産業の総崩れに直面しながら反転攻勢の気概もなく、内部留保の積み上げに余念がない。日本経済の“焼け跡”にはアベノミクスの「三本の矢」が折れ、突き刺さっているのみである。
「クロダはオンライン参加か?」。七月半ばにインドネシアのバリ島で開催され、鈴木俊一財務相と黒田東彦日銀総裁も現地参加した「G20財務相・中央銀行総裁会議」。各国の中銀関係者がリラックスした場で口にした冗談がこれだ。地味で朴訥ながらも発言回数を増やそうと奮闘した鈴木財務相に比べ、黒田総裁は精彩を欠き、存在感が薄かった。
 だが、それ以上に日銀が今や世界の中銀から異端扱いされ、見下・・・