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経済

《クローズ・アップ》澤田 秀雄(エイチ・アイ・エス会長)

ハウステンボス売却で迫る「終末」

2022年8月号

 コロナの第七波が夏休みの旅行シーズンにタイミングを合わせるように日本に襲いかかってきた。二〇二〇年三月以降の国内及びインバウンドの旅行需要の壊滅という悪夢の二年間に耐え、再生の道を歩み始めていた旅行業界関係者にとって、もはや天を仰ぐしかない苦境である。
 第七波到来のニュースとともに旅行業界に衝撃を与えたのが、エイチ・アイ・エス(HIS)のハウステンボスの売却である。HISは二〇年十月期、二一年十月期と二期連続で巨額赤字を出しており、今期も六百三十億円の赤字を予想。同社は依然、一千億円を超える現預金を保有しており、当面は持ちこたえられるとしても、コロナ禍の先行きは見通せない。「虎の子」の資産売却で経営安定を図る狙いといっていい。
 一九九二年の開業以来、一度も黒字化できず、地元長崎県はもちろん九州経済界が持て余していたハウステンボスを再建したのは澤田秀雄HIS会長(七十一歳)だ。二〇一〇年に個人として経営に乗り出し、わずか半年で期間黒字を達成。その後HISの事業に加えた。東京ディズニーリゾートとほぼ同面積で、二千数百億円の初期投資をかけて建設された巨大テーマパーク・・・