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経済

《企業研究》東京電力

旧経営陣「十三兆円賠償」の驚愕

2022年8月号

 安全対策に費やすコストと利益の確保・追求をいかに両立させていくべきか―企業経営者らに改めてその問い直しを迫る判決だった。
 東京・霞が関一丁目の東京地方裁判所一〇三号法廷。七月十三日午後三時過ぎ、開廷とともに朝倉佳秀裁判長の判決を読み上げる声が廷内に朗々と響き渡った。
「主文。被告勝俣、被告清水、被告武黒及び被告武藤は東京電力(ホールディングス=HD)に対し連帯して十三兆三千二百十億円及びこれに対する平成二十九年六月二日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え」
 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の過酷事故を巡り、東電の株主ら四十八人が勝俣恒久元会長ら旧経営陣に対して二十二兆円の賠償を求めた株主代表訴訟で東京地裁は、被告ら四人に総額十三兆円超の損害賠償金を東電に支払うよう命じる判決を下した。日本の民事裁判上、過去に類例のない巨額の賠償金で、原発事故を巡り旧経営陣の責任を認めた初めての判決となる。
 地裁が認定した東電の被った損害の内訳は①廃炉・汚染水対策費用で一兆六千百五十億円②被災者への損害賠償費用で七兆八百三十四億円③除染・中・・・