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経済

トヨタ生産方式は「時代遅れ」

世界情勢が変えた「在庫」の価値

2022年9月号

「トヨタ生産方式(TPS)」といえば、「ジャスト・イン・タイム(JIT)」を世界の製造業に浸透させ、今もトヨタ自動車の好業績を支える「不滅の真理」のように捉えられている。だが、コロナ感染によるアジアの生産停止、コンテナなど海上物流の混乱、米中冷戦などサプライチェーンが半ば崩壊する環境変化の中で、「JIT神話」が世界の製造業を縛り、マイナスの影響を及ぼしているとの指摘がトヨタの周辺でも高まっている。「在庫はムダ」と批判しながら下請けの隠し在庫に助けられ、安定操業を続けるトヨタへの不信感は世界に広がる。その悪弊は子会社、日野自動車の品質不正となって露見したのである。
「JITは何のためにあるか?」。トヨタの直系メーカーに部品を納める「ティア2(第二階層)」メーカー幹部が管理職に問うた。「トヨタご出身のJITコンサルタント殿を失業させないため」と部下は答えた。ブラックジョークではなく、本当にあったやりとりだ。トヨタ系に限らず、日本の製造業でJITコンサルタントに経営をガタガタにされた、という話は今や枚挙にいとまがない。
 ある中堅部品メーカーの生産現場の管理職が昨年、調達・・・