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経済

《クローズ・アップ》小木曽 聡(日野自動車社長)

トヨタ天下りが生んだ「隠蔽体質」

2022年9月号

 送り出したトヨタ自動車の豊田章男社長から「分かってるよね」、迎え入れた日野自動車の下義生会長(当時)からは「やることがたくさんあるぞ」と声をかけられたという。「修羅場」を予感させるスタートだった。小木曽聡日野自動車社長は、子供のころからの自動車マニア。中高生時代は本屋の店頭に並ぶ自動車雑誌を片っぱしから立ち読みして情報を仕入れた。東京工業大学では自動車部に所属し、自動車の改造やラリーに没頭する。一九八三年に大学を卒業すると、トヨタへ入社。典型的な「オタク技術者」だった。
 本来なら開発に専念し、経営陣に加わるようなタイプではない。地味な開発社員にすぎなかった小木曽が一躍、世に知れるようになったのは、入社十年目の九三年に世界初の量産ハイブリッド車(HV)「プリウス」を開発する「G21プロジェクト」の立ち上げに参加したのがきっかけ。この時の開発責任者が、小木曽の後ろ盾と目されている内山田竹志トヨタ会長だ。二代目、三代目「プリウス」や「プリウスα」「プリウスPHV」の開発にも参加。二〇〇七年には開発責任者として小型HV「アクア」を手がけ、大ヒットに導いて開発部門のエー・・・