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日米韓の脆すぎる 「対中協力関係」

「ペロシ訪台」が残した重い課題

2022年9月号

 日本最西端にある島、与那国島。名物の焼酎の銘柄は、高い波に遮られて近づくのが難しい「渡難の島」と呼ばれたことに由来する。
 八月四日、この島からわずか八十キロ離れた海上に中国の弾道ミサイルDF15が着弾した。地元漁協は八日まで沖合漁の自粛を漁師らに呼びかけた。この光景は二十七年前と全く変わっていない。
 中国は一九九五年から九六年にかけ、台湾の李登輝政権に反発してミサイル発射実験を行った。当時も漁ができなくなった与那国島関係者らが上京し、外務省などに実験中止を中国に働きかけるよう陳情を行った。島の関係者らは防衛庁(当時)に自衛隊の駐屯を働きかけた。それまで島にある武器は、二カ所の駐在所に詰める警官が持つ拳銃二丁だけという有り様だった。
 何とか二〇一六年、陸上自衛隊沿岸監視隊の駐屯が実現した。現在、島の山中には計五基のマリンレーダーが設置され、海上を移動する艦船の動きを追っている。ただ、台湾まで一一〇キロという近さを考慮した結果、当時の防衛省は「中国・台湾への刺激を避ける」という判断から、宮古島などと同様の地対艦ミサイル部隊の配備は見送った。
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