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社会・文化

「食料安保」で焼け太る 農水省とJA

物価高「便乗」で予算と利権が膨張

2022年9月号

 新型コロナ禍やウクライナ戦争、円安を背景に食品の値上げが相次いでいる。農業協同組合(JA)系の専門紙は「食料有事」(日本農業新聞)と危機感も露わに食料安全保障の重要性を訴え、農業関連予算の増額を主張している。しかし、現在の日本では、国内生産にいくら補助金を注ぎ込んでも食料安全保障は達成できない。行政の縦割りを根本的に見直さない限り、飢餓への備えは空回りを続けるだけだ。
 物価高と食料安保はまったく別の問題だ。終身雇用制の崩壊などで日本社会のセーフティーネット(安全網)が弱体化し、物価高が家計を直撃する傾向が強くなっているのは事実だが、これは生活保護の拡充など社会政策で解決する課題であり、農業政策とは関係がない。
 主要メディアは「食品の値上げで困窮する」と弱者の味方を装うが、百円程度でカップ麺、バナナ(四~五本)、食パン(六枚)などが買える国は、先進国では日本ぐらいだ。これらの価格が倍になったとしても本当に「困窮」する世帯がどれほどあるのか。コメに至っては飼料に転用することで価格の下落を下支えしているのが実状だ。

定義すらない食料安保・・・