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社会・文化

名ばかり「国葬」の虚しさよ

かくも反対される「奇妙な儀式」

2022年9月号

 九月二十七日に東京・日本武道館で行われる安倍晋三元首相の国葬は、宮内庁にとっても頭痛の種になっている。天皇皇后両陛下は大喪の礼や親交の深い外国王室への弔問を除けば原則として葬儀には出ない。勅使を遣わすだけだ。戦後、唯一行われた吉田茂元首相の国葬(一九六七年)には、当時皇太子だった上皇さまと皇太子妃・美智子さまが参列した。政府から出席を求められている以上、先例に従えば、皇嗣と皇嗣妃である秋篠宮ご夫妻が参列されることになるが、「国民世論は割れているどころか過半数が反対、調査によっては八割が反対している現状で、皇室が国葬のお墨付きに利用されたと見られかねない。ただでさえ小室眞子さんの結婚や悠仁さまの有名高校進学で風当たりが強い時に、国葬反対の逆風が皇室にまで向けられやしないか」(宮内庁幹部)と憂慮しているからだという。
 諸外国を含め国葬とは一般に、国家の儀式として国費で行われる葬儀のことだが、日本では歴史的に明治以降の天皇及びご一家の葬儀を意味した。国家に特段の偉勲があった者(功臣)に対する国家主催の葬儀は英米中国などに例があり、日本でも明治以降に取り入れられた。ただし、天皇か・・・