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ウクライナ「過激民族主義」の危うさ

いずれEUを悩ます「火種」に

2022年10月号

 ロシアの侵攻開始から半年を経ても、ウクライナは激しい抵抗をやめず、一部では反攻にさえ乗り出す。その士気を支えるのは、ロシアの暴挙の前に高まるナショナリズムだ。欧米諸国も強力な武器・経済支援を続け、国家の威信をかけた戦いを後押しする。だが、この国に広がる愛国心には過激主義の影もちらつく。それは、将来、ウクライナを欧州連合(EU)に迎え入れようとする欧州にとって、深刻な災いの種となりかねない。
「ウクライナと共に」「ウクライナのように勇敢になれ」―。ウクライナでは今、国内の至る所でそんな看板やポスターを目にする。青と黄の国旗のほか、戦場で銃を構える兵士の写真やイラストも掲げられ、戦時下における愛国心の高揚が街を包む。「ロシアの戦艦、くたばれ」などとロシアへの憎悪をむきだしにするメッセージも多い。人々の声を拾えば、「欧米はもっと武器を支援してくれ。私たちは戦う」と勇ましい。
 ウクライナとロシアは共に九世紀ごろに建国されたキエフ・ルーシ(キエフ公国)をルーツとし、互いにその後継を主張する。ただ、ウクライナはロシア帝国に支配され、その後にソ連に組み込まれた。ウクライナのナ・・・

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