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経済

《企業研究》中部電力

経営陣真っ二つ「お家騒動」寸前

2022年11月号

 中部電力の転向は何を物語るのか―。原子力にツキがない電力業界の“三男坊”の心奥は千々に乱れる。
「JIPから誘いがあった!」
 東芝の買収に名乗りを上げた投資ファンド、日本産業パートナーズ(JIP)からTOB(株式公開買い付け)への参画を求められたとき、中電にはある種のユーフォリア(多幸感)が漂った。東芝は言うまでもなく、中電にとって浜岡原発(静岡県)の原子炉を発注してきた主契約企業。その買収に、中電は一千億円弱を出資する意向とメディアは報じた。
 東芝の株主になる―、そう社内外へ喧伝しているのは、中電の執行役員アライアンス推進室長・神谷泰範だ。京都大学大学院土木工学専攻の神谷は、相談役・水野明久と同じ“水力屋”の出自であり、後に設備計画に携わり、系統技術者出身の会長・勝野哲にも近い。将来の社長候補と目されるが、その人物が東芝のTOBに前のめりなのだ。
 水野、勝野の社長時代から浜岡原発は廃炉が既定方針だったはずである。東海地震の想定震源域に位置し、近傍を東海道新幹線、東名高速道路が走る浜岡原発は・・・