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連載

現代史の言霊  第56話

十二月の惨劇 - 米サンディ・フック小学校乱射事件 (二〇一二年)
伊熊 幹雄

2022年12月号

《言論は自由だが、ウソには代価が伴う》
 被害者遺族の弁護士

 米国の東海岸コネチカット州のニュータウンは、静かで豊かな郊外都市だ。ニューヨーク都市圏に属し、二万七千人ほどの住民はほとんど白人である。家庭の平均年収は十万ドルを超える。
 ここは、一つの銃乱射事件で永遠に米国史上に名を残すことになった。二〇一二年十二月十四日の午前九時半ごろ。一人の男がサンディ・フック小学校に侵入し、一年生の教室二つで相次いで銃を乱射した末、自殺した。職員六人と小学一年生(六~七歳)二十人の計二十六人が死亡した。この間、わずか五分だった。
 悲しいことに、この事件でも死者数は史上最悪ではなかった。〇七年のバージニア工科大学事件では、三十二人が犠牲になった。

渦巻いた「陰謀論」

 犯人のアダム・ランザは当時二十歳。同じ市内に母親と暮らしていた。この朝は母親を殺害した後に、黒い服にサングラス、耳栓をつけ、サンディ・フック小学校に乗り込んだ。武器は、・・・

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