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ドイツ「国家転覆計画」が示す闇

凄まじき「極右思想」の広がり

2023年1月号

 ドイツで国家転覆を企てたとして、極右組織「ライヒスビュルガー(帝国市民)」の構成員ら数十人が一斉に摘発された。
 組織内に軍事部門を擁する上に、連邦軍の特殊部隊員ともつながりがある。逮捕者には元連邦議会議員や現職判事、有名シェフや元貴族など、社会的影響力の強い人々も含まれていた。
 クーデター成功の見込みは全くなかったとはいえ、現代ドイツにおける反社会的傾向の広がりには、震撼すべきものがある。

「迷惑オヤジ」が大増殖

 陰謀を企んでいる集団は通常、身分を偽って社会に潜むものだ。ところが、ドイツの極右はすぐに分かる。奇怪な符丁を日常生活で、しかも一般市民相手に使うからだ。
「あんた、GbmHから来たのか?」
「ああ。俺の仕事はGbmHの下請けだ」
 GbmHとは、ドイツ語で有限会社のこと。今回摘発された「帝国市民」ら極右組織は、第二次世界大戦後に誕生したドイツ連邦共和国(BRD)を正統な国家と認めず、侮蔑的に「BRD有限会社」とか、単に「有限会社」と呼んでいる・・・