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連載

現代史の言霊  第57話

一月の軍縮 -第二次戦略兵器削減条約署名(一九九三年)-
伊熊 幹雄

2023年1月号

《ロシアは米国と同等のパートナー》
ボリス・エリツィン(元ロシア大統領)

 二〇二二年は「核兵器」という言葉が世界中で飛び交った。イランや北朝鮮に加え、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領までもが、核の威嚇を口にした。米国の『原子力科学者会報』が定める「世界終末時計」は、午前〇時の百秒前を示している。

レーガンとゴルバチョフの夢

 三十年前の一九九三年一月三日。米国とロシアは「第二次戦略兵器削減条約(通称STARTⅡ)」に署名し、「核なき世界」への希望が膨らんだ。人類はどこで、再び危うい道に迷い込んだのだろうか。
 核軍縮の試みは八〇年代、二人の指導者により始まった。米国のロナルド・レーガン大統領はタカ派イメージが強いが、心底では核兵器を嫌悪し、「全廃」を夢見ていた。ソ連共産党のミハイル・ゴルバチョフ書記長(後にソ連大統領)も、核兵器がソ連経済の足かせであることを苦々しく思っていた。
 二人は、初顔合わせのジュネーブ会談(一・・・

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