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連載

金融の世紀

第1回【第六の列強】
黒木亮

2023年1月号

 国際的な金融取引が世界の政治・経済に無視できない影響力を持ち、ときに世界を振り回すようになった。
 ことの始まりは、十五世紀末にポルトガルが海外進出を始め、それにスペイン、オランダ、英国などが続き、国境をまたぐ商取引が活発化したことである。
 金融の影響力が顕著になったのは、二十世紀に入ってからだ。二〇〇八年のリーマンショックは、世界を破滅の瀬戸際に追い込んだ。これは、かつて存在しなかったグローバルな金融システムや金融技術が創出されたためだ。
 すなわち第二次世界大戦の終結とともに、IMF(国際通貨基金)・世界銀行や、一九五六年に始まるパリクラブなど、国家という枠組みを超えた公的な金融の仕組みが創設された。これらはむしろ金融の安定化をもたらすための組織だが、環境保護団体から厳しい非難を受けるなど、その功罪は単純ではない。
 一方、一九七〇年前後から、民間の金融が急速な変貌を遂げた。国境を超えたシンジケートローンの発達、コーポレート・レイダーと呼ばれる強欲で攻撃的な企業買収家たちの跋扈、オプション理論やスワップなどによる金融工学とトレーディングの・・・

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