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経済

日銀「豹変」は明るい兆し

金融緩和終了で変わる製造業

2023年1月号

 日本銀行はデフレ脱却と成長軌道への回復を目指した十年近くに及ぶ異次元金融緩和に事実上、終止符を打った。黒田東彦総裁は政策転換を否定するが、世界は、日本がようやく米国、欧州連合(EU)などと足並みを揃えたと判断、日本経済に対する不透明感は薄れた。経済界も表面的には金利上昇に懸念を示しつつ、金融政策正常化で「事業環境の見通しが立てやすくなる」と見る。庶民も円安修正で輸入物価が沈静化することを歓迎する。黒田総裁の退任間際の変節は、製造業の国内回帰、外国企業の投資など日本が成長力を取り戻すきっかけになるかもしれない。
 二〇二二年春から、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)などが次々に金融緩和から引き締めに転じ、金利を引き上げていくなかで、「黒田日銀はグローバル金融界の一匹狼になった」と外資系金融機関を渡り歩いたエコノミストは指摘する。群れを外れた狼は狩猟に苦労するだけでなく、他の猛獣の餌食にされやすい。高い技術力を持ちながら経営不振に陥った日本の大手製造業の買収、不動産・美術品の買い漁り、株・債券の空売りなど、黒田日銀の十年の間に日本は見えにくいところで投資ファ・・・

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