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連載

日本の科学アラカルト 149

次なる感染症の脅威に備える 鳥インフル研究の最前線

2023年1月号

 鳥インフルエンザが猛威を振るっている。農林水産省は例年、十一月から翌五月までを鳥インフル観測の「シーズン」としているが、今シーズンは史上初めて十月に確認された。しかも岡山県と北海道で確認され、いずれも殺処分が行われた。十一月二十二日時点で、すでに約二百七十五万羽が殺処分され、昨シーズン(二〇二一年十一月~二二年五月)の約百八十九万羽を上回ってしまった。十二月に入り青森県・三沢で一カ所としては過去最多となる百三十七万羽の殺処分も行われている。養鶏場だけでなく、和歌山県のアドベンチャーワールドでは十一月に飼育している鳥類の感染が確認されたため、防疫措置を行うために一時休園を余儀なくされた。
 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、我が国の鳥インフル対策・研究の拠点のひとつ。高病原性鳥インフル(HPAI)の感染状況を観測している。十一月一日には、ある事例についてのプレスリリースを出した。環境省が都道府県と連携して行っている鳥インフルの調査・監視システムで、九月二十五日に神奈川県内で衰弱状態となったハヤブサが回収され、翌日死亡した。国立環境研究所での遺伝子検査により、H5N・・・

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