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連載

新大学評判記 第37話

熊本大学情報融合学環 TSMC誘致ブームに「便乗」

2023年1月号

 台湾の半導体受託製造メーカー(ファウンドリー)、台湾積体電路製造(TSMC)の工場進出で、熊本県が異様な熱狂に包まれている。県は高速道路、空港アクセス鉄道の新設から工業団地、小中学校まで大盤振る舞いの建設計画を打ち上げる。地元財界もTSMCの下請けへの参入から人材派遣後輸出業、工場勤務者用アパートなどのTSMC関連ビジネス、人口増を見込んだショッピングモール新設計画までバラ色の夢を描く。
 TSMC進出に浮かれているのは地元の大学も同じだ。熊本大学は二〇二四年四月に「情報融合学環(仮称、学部に相当)」と工学部に「半導体デバイス工学課程(仮称、学科に相当)」を新設すると発表した。「学環」とは聞き慣れない用語だが、従来の「学部」が専門課程ではその中で教員と学生の関係が完結していたのに対し、学環はよりオープンで学際的な研究・教育アプローチが取れる組織形態のことだ。
 情報融合学環にはデータサイエンス(DS)総合コース、DS半導体コースを設け、「デジタル・トランスフォーメーション人材を育成する」とうたっている。だが、現実的な目的は半導体工場の生産管理や品質管理にあたる人材・・・

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