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《 世界のキーパーソン》 クリスティア・フリーランド (カナダ副首相 兼財務相)

「対露強硬」のNATOトップ候補

2023年1月号

 どんな職種にも「こいつにはかなわない」と舌を巻く才能がいる。フィナンシャル・タイムズ紙モスクワ支局長時代のフリーランドは、そんなプロの中のプロだった。
 小柄で表情豊かな女性で、どんな取材対象にも潜り込んでいく。悔しいかな、彼女は最高水準の記事を量産した。邦訳の『世紀の売却―第二のロシア革命の内幕』(新評論)で、その実力を今もうかがい知ることができる。
 政治家の方々には申し訳ないが、フリーランドが二〇一三年にカナダ政界に進出した時には、「なんたる才能の無駄遣いか」と筆者は感じたものだ。その際に初めて、ジャーナリズムに入る前は人権活動家だったことを知った。
 フリーランドの母方の祖父母はウクライナ人だった。祖父はウクライナ語新聞の記者。第二次世界大戦でソ連軍の侵攻を逃れ、終戦時にはドイツ・バイエルン州の難民キャンプにいた。米軍が運営していた病院で、フリーランドの母親が生まれた。難民一家はやがてカナダに渡った。
 難民キャンプ生まれの娘は長じて、カナダ・アルバータ州の農家に嫁いだ。フリーランドの父親だ。多才な人物で、農業経営の傍ら弁護士としても活・・・

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