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社会・文化

失われゆく 「新宿カルチャー」

駅再開発で絶える「反逆と異端」

2023年1月号

 新宿駅再開発計画が二〇二二年十月に始まった。西口の小田急百貨店と隣接ビルを四十八階建ての高層ビルに建て替え、山手線、中央線などの線路の上に幅広いデッキを設け、駅の東西を結ぶ。さらに京王百貨店、ルミネなども高層ビルに生まれ変わる。渋谷駅、横浜駅の再開発と同様に街を駅と一体のビルに吸収、新宿を平面から上下の移動の街に転換する。歌舞伎町、ゴールデン街、花園神社のテント芝居など新宿のアイコンは駅から一歩距離を置くことで反権力、多様性、既成の価値観からの自由を得た。新宿カルチャーは再開発を生き延びるだろうか。
 十月二日、小田急百貨店新宿本店の閉店日には示し合わせたわけではなく数百人の常連客が集まった。同じ新宿にある伊勢丹本店と違って、プレミアムや洗練とはほど遠い庶民派のデパートだった。隣の京王百貨店も中高年女性をターゲットにしたせいもあって垢抜けないが、親しみがあり、「全国駅弁大会」で名を上げたユニークな百貨店。二つの百貨店は新宿の体温、体臭を感じさせた。
 四〇年頃までかかる息の長い新宿駅再開発の後、小田急百貨店は今のところ新ビルに戻る予定。京王百貨店は未定だが、閉店確・・・

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