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英国が「西欧最貧国」に転落へ

EU離脱で深まった「生活苦」

2023年2月号

 ブリティッシュ・ロックの古いファンには、懐かしい時代が戻ってきたようだ。病院も鉄道も学校も、あちらこちらでストばかり。今の英国は、一九七〇年代末の「不満の冬」時代の再現である。
 大手を振って欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を果たしたものの、経済は不振で国民の収入も伸び悩んでいる。「今や西欧の最貧国」との指摘も上がっており、英国民のほぼ半分が「リシ・スナク首相は年内に退陣」と見切っている。
 三十万人の組合員を持つ「王立看護協会」は、看護師の労働組合の草分けである。創設は第一次世界大戦中の一九一六年で、昨年死去したエリザベス女王が長らくパトロン(後見人)を務めていた。
 昨年十二月、百年以上の歴史の中で初めてのことをした。組合員の投票により、史上初のストに踏み切ったのだ。
「もうやっていられない、我慢の限界というのが組合員の総意。英国の医療は、落ちるところまで落ちた。これは私たちだけでなく、患者の皆さん全員のためでもあるのです」と、パット・カレン書記長はストの理由を説明した。
 組合が「落ちるところまで落ちた」と言うのは、皆・・・

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