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政治

岸田「異次元の少子化対策」の欺瞞

効果なき制度でまた「国民負担増」

2023年2月号

 あまりの評判の悪さに総理大臣官邸のスタッフまで「発案者」を問われても言い淀むキャッチフレーズには、丁寧な根回しと慎重な制度設計なしで新たな負担を強要しようとする総理大臣・岸田文雄の国民に対する欺瞞がにじむ。一月四日の伊勢神宮参拝の後の年頭記者会見で表明した「異次元の少子化対策」のことだ。
 二〇二二年の〝出生数八十万人割れの見通し〟に触れ、「少子化で縮小する日本には投資できないという声を払拭せねばならない。『子どもファースト』の経済社会を」と訴えたまではいい。具体策の第一に挙げたのが「児童手当中心の経済的支援の強化」だった。岸田に同行した経験不足の若い総理番の記者からは質問さえ出なかったものの、発言を知った政府・与党の要路からは失笑が漏れた。
「異次元」とは「通常とは全く異なる考え方、大胆な施策」を含意するのに、旧態依然の制度の手直しでは、その体をなさない。
 それどころか、現行制度の拡充となれば、自由民主党の従来の主張との矛盾が生じかねない。なにしろ制度拡充には、受給要件から所得制限を外した対象拡大と支給額の増加ぐらいしかなく、かつて民主党政権が導入し・・・

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