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ドイツ産業が「空っぽ」になる日

中国のワナで名門企業が凋落

2023年3月号

 欧州最大の工業国ドイツに、「産業空洞化」の深刻な懸念が浮上している。ロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアからのエネルギー供給が止まった。これにより、安価で良質な「ドイツ製品(メイド・イン・ジャーマニー)」を世界中に輸出するという経済モデルが、大きな危機に立たされている。
 ドイツ企業は中国進出に活路を見出そうとしているが、中国に核心技術を奪われた上、国内の産業基盤は弱くなるばかりだ。発展を下支えしてきた中小、中堅企業群からは、「このままではやっていけない」という悲鳴が上がる。
 ドイツ産業連盟(BDI)のジークフリート・ルスブルム会長は、率直な物言いで定評がある。
 二月の記者会見では、「ドイツは他の先進国に比べ、ますます遅れをとっている」「このままでは、ドイツ企業が(国外に)産業基盤を移すことは避けられない」などと、ドイツ経済の先行きが厳しい見通しを示し、国民を驚かせた。
「二〇二二年第4四半期のGDP(国内総生産)が前期比〇・二%のマイナス成長で、国内には『いよいよ来たか』というムードが広がった。ルスブルム会長は、『そんなものでは、すまな・・・

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