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政治

政界から消える「安倍家」

「岸家」も危うい山口県の事情

2023年3月号

 政界から「安倍家」の名前が消える。対をなす「岸家」の名前は残るが、後述する事情で前途は芳しくない。兄弟分の「佐藤家」の名前はとうに忘れられた。首相三人、外相三人、与党幹事長四人を輩出し、戦後政界で三分の二世紀の長きにわたり権勢を振るった山口県の政治家一族は、かくして終幕を迎えつつある。
 一族の名前を唯一継ぐことになる岸信千世氏(三十一)。引退する父・岸信夫元防衛相(六十三)の後継指名を受け、四月の衆院山口二区補選に立候補を表明したが、山口県に「初お目見え」したのは第一次安倍晋三政権(二〇〇六~〇七年)の時。戦後最年少の首相就任に沸く地元・下関市で開かれた安倍後援会に現れた。首相の名代で妻昭恵氏と母洋子氏がお礼のあいさつをした後、司会の女性の甲高い声が響いた。「皆様、キシノブチヨでございます」。会場は初めて聞く名前にきょとん。ぺこりと頭を下げた学生服を着た童顔の少年に「なぜ岸(信夫氏は当時、同県選出参院議員)の息子が今ここに?」と戸惑った。

後援会は三分裂状態

 故晋三氏の後継者に困り信千世氏にも・・・

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