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サウジとイラン「虚構」の国交正常化

中東安定化には程遠い「裏事情」

2023年4月号

 サウジアラビアとイランが中国の仲介で国交正常化に合意―。三月十日の突然のニュースに誰もが目を疑った。というのも、ここ最近、中東のSNS上は、「サウジとイスラエルの国交正常化が近い」との話題で持ちきりだったからだ。これまで覇権を競ってきたイランとの突然の歩み寄り。そして、米国から中国主導の仲介への変心。サウジの外交政策はどこへ向かおうとしているのだろうか。
 今回の合意の場には、中国の外交担当トップ王毅氏の下、サウジ側の代表はムサーイド・アイバーン国務大臣・国家安全保障顧問、そしてイラン側は、アリー・シャムハーニ国家安全保障最高評議会書記が出席した。アイバーン氏、シャムハーニ氏ともそれぞれ国家元首から信頼の厚い、覚えめでたい人物だ。
 二〇一六年以来、国交断絶状態にあった両国は、再び手を取り合うことを約束した。ただ、あくまで約束に過ぎない。核開発問題、イエメン内戦、両国に山積する問題は何も解決していない。
 そもそも、サウジとイランの対立を助長させたのは、現国王のサルマンと息子のムハンマド皇太子だ。
 ムハンマド皇太子が意気揚々と始めたイエメン戦・・・

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