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経済

巨大発電会社「JERA」の権力闘争

「株式公開」を巡る不毛な内紛

2023年4月号

CEO(最高経営責任者)二人のツートップとは、何を物語るのか―。不可解な人事に首を傾げつつも、エネルギー業界にはこんな声が広がる。
「中電がいよいよ世界最大級の燃料・火力発電会社の子会社化に動き始めた、ということだろう」
 中部電力と東京電力ホールディングス(HD)の折半出資会社JERA―。その社長に四月一日付で中電出身の奥田久栄が就任した。中電が三代続けて社長を輩出したことで、早くもJERAのIPO(株式公開)はそう遠くないと観測され始めている。というのも、IPOを含む経営企画を担ってきたのが奥田だからだ。
〈CO2 が出ない火をつくる。〉
 テレビには、脱炭素へ挑戦するJERAの広告が連日のように流れる。二〇二〇年からは大枚六十億円をはたき、プロ野球セントラル・リーグの冠スポンサーになり、知名度の向上に努めてきた。奥田ら中電出身幹部は「巨人軍の原辰徳監督が挨拶にきた!」などとはしゃいでいたが、東電HDには「そんなカネがあるなら、福島第一原発事故の賠償に回せと批判を招きかねない」と怨嗟が燻ぶる。
 それでも、中電がJERAのIPOを目・・・