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社会・文化

夢の医療「遺伝子治療」で成果続々

がんや生活習慣病「克服」の光明

2023年4月号

 多くの病は遺伝子の異常が関係する。遺伝子を修復することで、病気を克服するという夢の医療が遺伝子治療だ。この治療の開発は副作用との戦いだった。長期の研究停止を余儀なくされたが、ある程度の副作用が受容されるがん治療の分野で進んだ。それが近年、先天異常など長期の安全性が求められる「良性」疾患に対する治療の実用化が進む。米国を中心に、より安全な先端技術も生まれている。しかし、この分野で日本の存在感はないに等しい。
 遺伝子治療は、ヒトの遺伝子を組み込んだウイルスを細胞に注入することで、不足する蛋白質を発現させたり、異常蛋白質の発現を抑制したりする。
 二月二十三日、米『ニューイングランド医学誌』(NEJM)に治療の進展を象徴する研究が掲載された。先天性の「良性」疾患である血友病に対する二つの臨床試験だ。一つ目はアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、血友病B患者で欠損する凝固第九因子を補充するエトラナコゲン・デザパルボベクという遺伝子治療だ。出血の頻度を六四%減らすことが示された。これはオランダのバイオベンチャーであるユニキュア社と豪CSL社が共同開発したもので、昨年十一月、・・・

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