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社会・文化

「情報工学者」が足りない日本

先端科学で凋落の主因

2023年4月号

 政府は次のパンデミックに備えるため、三月七日、厚生労働省傘下の国立国際医療研究センターと国立感染症研究所を統合し、「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案を閣議決定した。米国の感染症対策の司令塔である疾病対策センター(CDC)がモデルだ。「日本版CDC」と称される。二〇二五年度以降に発足予定だ。この動きに感染症を専門とする医学部教授は「厚労省の医系技官とお仲間のお医者さんたちでは、世界での議論についていけない」と嘆く。そこからは「情報工学者の欠如」という重大な問題が浮かび上がる。
 情報工学とは、数学をベースに情報処理を研究する学問分野だ。生物・医学分野に特化した場合、「バイオインフォマティクス」と称することもある。
 近年、世界の医学研究のリーダーは情報工学者が務めることが多い。二月二十日、英国政府は政府最高科学顧問に数理生物学を専門とするオックスフォード大教授のアンジェラ・マクリーン氏を任命した。彼女は「途上国における麻疹の疫学に対する数理モデル」で博士号を取得した数学者だ。コロナパンデミックでは、流行拡大のモデルを構築するとともに、英国政府の科学諮問グルー・・・

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