三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

日本の科学アラカルト 152

木質バイオマスを次世代材料にナノセルロースの利用研究

2023年4月号

 現在、地上で最大の「動物」はゾウだ。かつて地球上を闊歩していた恐竜はもっと大きいものもいる。ただ史上最大の恐竜といわれるアンフィコエリアスのサイズには諸説あるが体長六十メートル、体重は百五十トンとされる。「たかだか」その程度だ。
 同じく細胞を持つ生物である「植物」の場合、大きなものはとてつもない。世界最大といわれるジャイアントセコイアの木は、高さが百メートルに達し、三十階建てのビルにも匹敵する。根元の周囲は三十メートル、重さは一千トンを超えることもあるという。
 地上の動物のサイズに限界がある理由のひとつは、細胞の構造だ。動物の細胞ひとつひとつを周囲と隔絶しているのは「細胞膜」というやわらかい膜である。単純に動物の細胞だけを積み上げていったら、体の形を維持することも難しく、下のほうの細胞は上から潰されてしまう。それをサポートするのが「骨」である。人間などの内骨格か、甲殻類や昆虫のような外骨格があり細胞の構造的な弱さを補い、体のサイズや強さを維持している。ただそれにも限界があり、地面と接する部分の細胞の耐荷重の限界があるため、前述した最大の恐竜くらいが関の山なのだ・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます